新しい街の空気を僕は吸ってみたけど、
少し懐かしい匂いがするのは何故・・・
ここから見える景色は昔よりも高くて、
遠くを見渡せばまるで僕は勝者になった様だ。
この街には僕の事を知る人は誰も居ない。
いつか行きたい場所や、知りたい事が
あるのかすら、今はまだ何も分からないけれど、
僕はlooserにはならないと決めた。
言葉の海に溺れた魚の様に、
もし目の前の道を見失ってしまったのなら
もう一度振り出しに立ち返る事が出来れば、
きっとまだ間に合うはず・・・。
自転車のペダルを漕いだ足は力強くて、
加速する程に風に背中押された。
今なら出来るけど、多分あの頃の僕はまだ
景色を見る余裕なんて無いと言えなかったと思う。
錆びついた煙突は家までの近道。
白いトカゲの後を追い掛ければ、
道端に咲いていた小さな花に気が付いて
僕はlooserにはなっちゃいないと知った。
イメージに浮かんだ世界の広さなんて
誰かの噂話とそんなに変わりはないけれど。
ほんの僅かでしかないと気付く事が出来れば、
もう、大丈夫なはず・・・