白日

少しずつ少しずつ街から消えるのは冬の匂い。
何と無く穏やかな心地良い風が吹き始めてる。
あの店の前を通る。パンの匂いと笑い声がする。
立ち止まり躊躇して誘われるままにベルを鳴らす。

桜の木の下の恋人は花びらに包まれ
幸せそうな笑顔は時間さえも止める。
その仕草、その姿、その声…。

今日の僕は試される。
全ての答えが下されようとしている。
ダサい格好も今だけなら
君には許してもらえる気さえするんだ。
そういえば君と出会った日も
白日の夜…。

真っ暗なあの空が色を足し始めた夜明け前。
何も無い向こう岸、コンクリートのビルが立ち並ぶ。
薄紅色の天井に思い出ばかりが増えて行く。
もう少しここに居たいと君の心の扉、ノックする。

優しい恋のメロディは街の風とともに響く。
気まぐれな春の天気は二人の距離を縮めるよ。
君の指、君の髪、この声…。

明日の僕は笑ってる。
昨日の僕は泣き顔のまま立ちすくむ。
煙草の匂いが消える前に
そういえば君と出会った日も
白日の夜…。
初めての約束をしたのも
白日の夜…。

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